「お酒飲まないって言ったか?」診察室に響き渡る声
「ここ出るとき自分から誓約書持ってきましたよね。」と医師。
「そんなこと言ってない。ただ名前書いただけだ。内容なんて知らん。」ととぼける患者。
「これ見てみなさい。あなたの字でしょ。」誓約書には本人の字でお酒は飲まないと書いてある。サインだけじゃなくて文章も自作。誤魔化しようがないが、患者さんはそれでも抵抗。
「名前書いただけだって行ってんだろ!だいたい試しに少し飲んだだけなのに何でここにいなきゃいけないんだ!」
押し問答すること10分。患者さんの理論は完全に破綻。医療保護入院であえなく入院。保護室へ誘導する。
「あのやぶ医者、いつもああだ!俺の言うことは聞かない。」
保護室誘導までの間、看護師に愚痴っている。
面白いのは自身が何で入院に至ったのか、全く話にでてこないことだ。ひとしきり文句を言うが、自身が原因であることは忘れてしまっている。こういう人に飲酒の教育をしていくのは難しい。お酒は悪くないという表現をしたりする。そういう患者さんにはいつもこう言っている。
「お酒は悪くないと思います。でもね、お酒と〇〇さんが一緒になると悪さするんですよね。悪い友人みたいなもんじゃないですか?だから付き合うの止めないと。」
理解はされないことが多いが、心の奥底に刷り込むことも必要なのかもしれない、そう思って指導している。依存症は自分自身の気持ち次第という側面も大きい。日々報われない指導も必要だと考えている。