アディクション看護師の日日是好日

依存症治療病棟で起きる日々の出来事を日記のように書いてます。

身体拘束

「服で自殺しようとしたみたい。たまたま見つけたみたいだけど。」

 

「動画残っているからみてみたら?」

 

と日勤業務のリーダーから話。画像見ると確かに衣服を柵にかけて首を吊ろうとしている。アルコール依存症も攻撃的な感じに変貌する人もいれば、抑うつ的になって自殺を考えてしまうような人もいる。感覚的には8:2くらいの割合。

 

この患者さんに限っては、ストレスへの閾値が低く、家族への過度な依存もあって年齢以上に幼い。パフォーマンス的に自殺しようとしてしまう。

 

短期的にはなるけど身体拘束をしながら患者さんの身を守り、薬剤調整をしていく。そんなわけで、出勤したら拘束されていた。

 

若い医者だけになかなか薬剤調整がうまくいっていないのも原因。若い医者に限って、看護師の意見を聞かないから余計に困る。精神科看護の面白いところは、理論じゃない部分、五感というか経験に基づく「勘」も看護の要素のなかで重要。患者のちょっとした変化をとらえる力が凄い看護師もいる。この患者さんの自殺企図がありそうだから気をつけろと最初に言っていたのも、経験が長い看護師さん。

 

なんでも理論、エビデンスという風潮が看護の中にも定着してきている。それは確かに重要。「勘」を理論的に説明しなきゃいけないのは分かっているが、そうはいっても難しい。

 

 

人を扱っている以上、いろいろなことが起こりうる。特に精神科では自殺の問題もある。どんなに警戒していても防ぎきれないのも事実。20年近く仕事しているが、飛び降り現場や首つり現場を目撃することもあった。普通に生活していたら考えられない現場を何度も経験している。仕事とはいえ、きつい時も時々あった。

 

それだけに、これからももっとその観察眼というか「勘」を磨いていきたい。