アディクション看護師の日日是好日

依存症治療病棟で起きる日々の出来事を日記のように書いてます。

必要悪

保護室が空くまで預かってほしいと依頼があって受けたみたい。」

 

「なんでも受ければいいってもんじゃないよね。」

 

「体よく送られてきたんじゃないの?」

 

夜勤入る前に日勤の看護師が話しているのを小耳にはさんだ。保護室に入っている患者さんのこと。

 

精神科では介護施設ではダメ、児童養護施設でもダメ、刑務所適応じゃない、そんな理由で患者さんが送られてくる。理由で多いのは「暴力」。ついで多いのは身寄りがない、地域では見切れないという患者さん。今回の患者さんは粗暴性が高く、どこも受け入れてくれないという患者さん。10代で一般的に言えば高度行動障害。粗暴性が高くて前の施設では暴力を受けたことのないスタッフがいない状況だったらしい。結構大ケガしたスタッフもいたらしい。

 

アルコール依存症という名の認知症で暴力があれば、精神科で見ることが多い。アルコール依存症じゃなくても暴力が過ぎれば、精神科で面倒を見る。確かに薬剤調整ができて、保護室という環境があるのは理想。『高齢者施設以上・刑務所未満』という立ち位置が精神科だから。今回のようにどこも見たがらない患者さんが入ってくることもある。社会的に見れば島流し的な状況だけど、精神科の看護師目線からすれば「必要悪」な面も大きい。

NHKで最近ある精神科病院の実情を報道したドキュメンタリーがあった。精神科看護師の意見で言わせてもらえば、そういう「必要悪」がなければどこが見るんだ?という歯がゆい感じの報道だった。患者に暴力をするのは完全にNG。ただ、精神科にはどうしても社会的に担う必要な部分もあるということは理解してほしい。

 

海外に努めた経験のある看護師さん曰く、「日本の治安がいいのは精神科の「必要悪」が機能しているから。どこも見切れないような案件の人は刑務所か野に放たれているかどちらかだよ。突然暴力する人が身近にいてもおかしくないのが海外。」だそうだ。

 

 

精神科看護で表になかなか出ない部分は患者からの暴力。妄想対象になればいきなり予告もなく殴られることだってある。そういう世界が精神科。ハイリスクな面もある。患者からの暴力でうつ病になったり、退職する看護師も見てきた。私自身も何度か暴力を受けたこともある。

 

 

緊張感の中での仕事してます。さて、今夜はストロング酎ハイ飲んで寝るか~。