アディクション看護師の日日是好日

依存症治療病棟で起きる日々の出来事を日記のように書いてます。

病院依存症

「ダルク行くくらいなら、病院に長くいさせてもらった方がいいです。」

 

「本気でそんなこと言いってるの?外にでて自由になりたくないの?」

 

「ダルクって合わないんすよね。行くくらいだったらここに居させてもらいたいっす。先生にもそう言おうと思ってます。」

 

まさかの答えに唖然としてしまった。自由よりも閉鎖された病院での暮らしを望むとは思っても見なかった。

 

20歳代前半の男性、薬物依存症で入院。ダルクは依存症の人が集まって集団生活を送りながら、依存症からの社会復帰を目指す施設。管理された生活をして、ミーティングとよばれる話し合いを連日行っている。

 

本人がダルクへの退院をしたくないのもなんとなく分かる。若くて薬物を使用したことを反省していない状況ではミーティングのような話し合いは苦痛でしかない。病院に居れば3食昼寝付き。プログラムは強制されるわけではないし、ただ毎日を仕事もせずにだらだら過ごせる。何もしたくない本人にとっては理想郷。

 

依存症治療は本人がどうしたいかというモチベーションが大きい。本人が止めたいと希望しないと入院もさせない施設もあるくらい。

 

なかなかこういう患者さんに未来に希望を持たせるのは難しい。今の社会システムは一度落ちてしまうと這い上がるのにかなり苦労するし、支援するシステムが脆弱だと感じる。

 

そんな患者さんたちにどう向き合うかが課題。国としては入院期間をできるだけ減らしていく方向というのは間違ってないと思う。だけど、入院後の受け皿がまだまだ足りない気はする。医療は難しい。