仏と不動明王
「看護師さん~すみません~」と作業療法士から呼び出し
患者移動や入院が重なって忙しいので看護師が応えない
「お願いします~。倒れちゃってます。」と少し切迫した声で看護師を呼び出す。
たまたま目が合ったので行ってみると、プログラムで集まった患者さんのど真ん中で天を仰いで倒れている。この患者さんはパニック発作でしょっちゅう倒れているから、看護師も冷静。焦る作業療法士を見ながら看護師の一人がきつい一言。
「はいはい、起きなさい!!自分で起きて!!起こさないわよ。」
患者さんは依然フリーズ状態。プログラムも中断しているため、車いすに乗せて病室へ。病室に行くころには意識もはっきりしてきた。
患者さんの中には知的障害やADHDなど社会的な規範を守れない人も多い。特に薬物依存の患者さんにはその傾向が強い。このところよく来ている大麻使用で入院している患者さんは対人関係を気づくのが苦手で、行動障害が少なからずある人がほとんど。しかも若い患者に多い。この倒れた患者さんも比較的若い部類で、IQがやや一般的より低い。ストレスをコントロールするのが苦手で、ストレスが閾値を超えるとすぐに倒れてしまう。
余談になりますが、高校生の大麻使用者は全国平均で300人に1人いるそうです。研修でそんなこと言ってたの思い出した。普通に1校に1人はいる計算になるから恐ろしい。
意識が回復したら今度は銃弾爆撃のようによくしゃべる。「部屋でいじめられてる。」「あの人といるとおかしくなる。」「食事は食べる気しないから止めてほしい。」訴えと要求のオンパレード。
呆れた看護師が最後はぴしゃり。
「食べなくてもいい。普段お菓子食べ過ぎなくらいなんだから、痩せるいい機会でしょ。嫌なら残しなさい。食事は止めないからね。」と。普段は仏のような看護師さんですが、時に不動明王的な一面も見せる。
精神科看護師にはそういう優しさと厳しさが必要だと思う。一般科では病気を治すことがメイン。精神科でも病気を治す治療をするが、さらに精神科では人を改めて育てなおすという側面もある。今日もいい勉強になったな~。