アディクション看護師の日日是好日

依存症治療病棟で起きる日々の出来事を日記のように書いてます。

直行便

「お迎えお願いします~。男性2名でだって。」と病棟クラークさん。

 

男性2名。外来から男性看護師を複数名呼ぶときは暴れることもある患者さんが来ている警告サイン。入院に納得していない患者さんの場合は外来から病棟に連れてくるまでが一苦労の場合も多い。

 

当日朝には入院に納得しているか、どこから来るのかが少しだけわかっている場合が多い。今日の入院予定は「〇〇警察署から直接入院」と書かれていた。

 

「入院なんか納得してるわけないだろ。」と廊下まで響く声ですでに騒然としている。外来の診療室に入ると私服の警察官、市役所職員、保健所職員に囲まれて、医師が入院の必要性を説明している。興奮して医師の話なんか聞いちゃいない。

 

こんな時はまずは落ち着かせるのがセオリー。

 

が、ここで若い警官が「先生の話をちゃんと聞け!!」と興奮している患者さんに言ったもんだからさらにヒートアップ。「拘置所です巻にしやがって!!警察が何やったか訴えてやるからな!!」と警官に詰め寄る。「余計なことしやがって」と思いながらも警察官に「出ててもらっていいですか?」と丁重に話して廊下へ誘導。

 

興奮冷めやらないから、医師も空気を読んだみたいで「治療しますから入院になります。病棟行きましょう。」と。外来で怪我でもされては困るから、男性看護師が囲んで病棟へ連れていった。病棟に連れていく最中ずっと警察の文句を言ってた。

 

 

入院時は大暴れしていた患者さんでしたが、入院してからはとても大人しい文学少年。小説をずっと読んで笑顔で看護師に対応してくれる。

 

「私はもともと大人しい性格なんですよ。あの時はね、拘置所です巻にされて、理由も聞かずに押さえつけられて興奮したんですよ。お酒?そりゃ飲んでましたけど、少しだけですよ。」と。警察署から直行便で来る人は自分のことがよく見えてない人がほとんど。入院紹介の書類にはお酒に酔って、器物破損やらで大騒ぎになった挙句、パトカーの中のアクリル板まで壊していたらしい。

 こういう人にアルコール依存について理解させていくのは正直難しい。自分のことじゃないと思っているところが、最大の敵。物理的にお酒から遠ざけるしかないと思うけど、本人から近づいてしまう。治療後に行く施設はいろいろあるけど、こういう人は本当に山奥で農作業をしてもらう方が治療になるんじゃないかといつも思う。この患者さんは真面目な側面もあるから、ちゃんと仕事を用意してあげればうまくやっていけると思うんだけどね。