アディクション看護師の日日是好日

依存症治療病棟で起きる日々の出来事を日記のように書いてます。

80歳代、高齢アルコール依存症

「また入院してくるみたいです。」と病棟クラークさん。

 

「えー」と看護師一同。

 

80歳代の耳の遠いアルコール依存のおじいちゃん。病棟も徐々に高齢化して、アルコール依存症の初回入院が80歳代もざらになってきている。この患者さんはどちらかといえば認知症で、アルコール依存症は2番目の診断。もともと農家で仕事の合間にお酒を買っては飲んでいたみたい。

 

お酒を飲んでは失禁したり、玄関で寝たり、家族が見切れなくなって病院へ「治療」と称して入院させたのが現実。基本的には薬物治療とプログラムへの参加で「治療」をしていくが、この患者さんはその治療に乗らない。物理的にお酒を止めれば問題ないわけで、介護施設でも十分。ここは闇の部分で治療費の方がはるかに介護施設に入るより安いということもある。

 

「今日帰る予定だけど、どうしたらいい?」と大声で何度も看護室へ来ている。

 

本人もこんなところにいないで自由に暮らしたいだろう。ご飯食べて寝てるだけの生活よりもよっぽど自宅で過ごした方が健康的。しかし、家族も戻ってこられては困ると医師との面談の時話していたらしい記録があった。

 

社会的入院という言葉があるが、この患者さんはまさにその一人。それが精神科であり、社会的に受け皿がない現実なのかもしれない。